二次の整数環の分類


\( n \in \mathbb{Z}\) を平方因子を持たない整数として、\( K = \mathbb{Q}(\sqrt{n}) \) の整数環( \( \mathbb{Z} \) の整閉包)の分類をします。目標は以下を示すことです。

定理
\( K \) の整数環 \( \mathcal{O}_K \) は、

\( \mathbb{Z}[\sqrt{n}] \ \ \ \ (n \equiv 2,3 ( \operatorname{mod} 4 ) ) \)
\( \displaystyle \mathbb{Z} \left[ \frac{1 + \sqrt{n}}{2} \right] \ \ \ \ (n \equiv 1 ( \operatorname{mod} 4 ) ) \)

まず、上の環が \( \mathcal{O}_K \) に含まれていることは明らかです。実際、\( \sqrt{n} \) 及び \( \frac{1 + \sqrt{n}}{2} \) が \( \mathbb{Z} \) 上整であることを確かめるのは簡単です。

さて、\( \alpha \in K \) の \( \mathbb{Q} \) 上の最小多項式を \( f(x) = x^2 + ax + b \) として、\( \alpha \) が \( \mathbb{Z} \) 上整であったと仮定します。すなわち、モニックな \( g(x) \in \mathbb{Z}[x] \) があって、\( g(\alpha) = 0 \) であったとしましょう。

このとき最小多項式で割れなければいけないので、\( g(x) = f(x)h(x) \) となる \( h(x) \in \mathbb{Q}[x] \) が存在します。最高次係数に着目して、\( h(x) \) はモニックです。

ここで、適当な \( e \in \mathbb{Q} - \{ 0 \} \) があって、\( ef(x) \in \mathbb{Z}[x] \) は原始多項式になり、

\( g(x) = ( ef(x) ) ( e^{-1} h(x) ) \) となります。このとき、「一意分解整域の原始多項式が、別の多項式で商体の中で割り切れるならもとの環の中でも割り切れる」という有名なガウスの補題を使うことで \( e^{-1} h(x) \in \mathbb{Z}[x] \) となります。ところで \( h(x) \) はモニック多項式だったのですから、\( e = \pm 1 \) となります。\( ef(x) \) が原始多項式となるように \( e \) を取ったので \( f(x) \) は原始多項式、特に \( \mathbb{Z}[x] \) の元です。


以上で、\( \alpha \in K \) が \( \mathbb{Z} \) 上整ならば、最小多項式 \( f(x) \) は整数係数であることがわかりました。

\( \alpha = c + d\sqrt{n}, \ \ c, d \in \mathbb{Q} \) が \( \mathbb{Z} \) 上整、すなわち \( \alpha \in \mathcal{O}_K \) のときこれの最小多項式は

\( f(x) = (x - (c + d\sqrt{n}) ) ( x - (c - d\sqrt{n}) ) = x^2 - 2cx + (c^2 - d^2 n) \)

となります。\( \alpha \in K \) が \( \mathbb{Z} \) 上整ならば、\( f(x) \) は整数係数ゆえ、\( \displaystyle c = \frac{k}{2}, \ k \in \mathbb{Z} \) とおけて、\( \displaystyle d = \frac{r}{s}, \ r,s \in \mathbb{Z}, \ s \geq 0 \) は互いに素とします。

\( \displaystyle c^2 - d^2 n = \frac{k^2s^2 - 4r^2n}{4s^2} \) が整数であることから、\( k^2s^2 - 4r^2n \) は、\( 4, s^2 \) で割り切れるので、\( 4r^2n \) は \( s^2 \) で割り切れ、\( k^2 s^2 \) は \( 4 \) で割り切れます。\( r, s \) は互いに素としたので、 \( 4n \) は \( s^2 \) で割り切れます。

\( n \) は平方因子を持たないので、\( 4n \) が \( s^2 \) で割り切れるのは、\( s = \pm 1, \pm 2 \) のときしかありえません。\( s \geq 0 \) としているので、\( s = 1, 2 \) として良いことが分かります。

以上で、\( c + d\sqrt{n} \in \mathcal{O}_K \) は \( \displaystyle c = \frac{k}{2}, \ d = \frac{r}{2}, r \ \ \ k, r \in \mathbb{Z} \) となることがわかり、ひとまず \( \displaystyle \mathcal{O}_K \subseteq \mathbb{Z} \left[ \frac{1 + \sqrt{n}}{2} \right] \) を得ます。\( n \equiv 1 \) のときは逆の包含が成り立つことは示したので \( n \equiv 1 \) のとき定理は成り立ちます


・\( s = 2 \) のとき、\( r, s \) は互いに素としたので \( r \) は奇数です。

\( \displaystyle c^2 - d^2 n = \frac{k^2s^2 - 4r^2n}{4s^2} = \frac{k^2 - r^2 n}{4} \) は整数ゆえ \( k^2 - r^2 n \) は \( 4 \) で割り切れます。\( \operatorname{mod} 4 \) で考えると、\( k^2 - r^2 n \equiv k^2 - n \equiv 0 \) より \( k^2 \equiv n \) となります。したがって、平方因子を持たないことと、4 を法とするときの平方について考えれば \( n \equiv 1 \) となります。また、\( k \) は奇数です。

したがって、対偶を考えて \( n \equiv 2, 3 \) であれば、\( s = 1 \) であり \( d \in \mathbb{Z} \) となります。\( \displaystyle c^2 - d^2 n = \frac{k^2s^2 - 4r^2n}{4s^2} = \frac{k^2}{4} - r^2n \) は整数なので、\( k \) は偶数となって \( \displaystyle c = \frac{k}{2} \in \mathbb{Z} \) を得ます。

以上で、\( n \equiv 2, 3 \) であれば、\( c + d\sqrt{n} \in \mathcal{O}_K \) は必ず \( c, d \in \mathbb{Z} \) より、\( \mathcal{O}_K \subseteq \mathbb{Z}[\sqrt{n}] \) となります。逆の包含関係は示したので、 \( n \equiv 2, 3 \) のときも定理は成り立ちます。\( \Box \)