ベクトル空間の基底の濃度の一意性(選択公理を仮定)


タイトルままです。この言明はよく見かける割には証明をあまり見かけないので、備忘録としてここに記しておきます。

\( V \) を体 \( k \) 上のベクトル空間として、 \( A, B \subseteqq V \) をそれぞれ一次独立な集合及び基底とします。今から、\( B \) の部分集合 \( B' \) と全単射 \( B' \to A \) があることを示していきます。ここから基底の濃度の一意性は直ちに従います。

以下の条件を満たす写像 \( \varphi : B_{\varphi} \to A \) の集合族 \( \Phi = \{ \varphi \} \) を考える :

・ \( B_{\varphi} \subseteqq B \) で、 \( \varphi \) は単射
・ \( A_{\varphi} := \varphi(B_{\varphi}) \subseteqq A, \ \ \ A'_{\varphi} = A - A_{\varphi} \) として、 \( B \cup A'_{\varphi} \) は一次独立

明らかに \( \Phi \) は空ではありません。なぜなら、\( B_{\varphi} = \varnothing \) で定まる唯一の写像は \( \Phi \) の元だからです。

お察しの通り、\( \Phi \) に今から半順序を入れて、ツォルンの補題を適用します。半順序は、以下のように定めます :

\( \varphi \leqq \psi \ \ \ \overset{ \mathrm{def} }{\Leftrightarrow} \ \ \ B_{\varphi} \subseteqq B_{\psi}, \ \psi|B_{\varphi} = \varphi\)

すると、ツォルンの補題が適用できることはすぐさまわかります。これによって、極大元 \( \sigma \) が存在することがわかります。

\( A_{\sigma} \subsetneqq A \) と仮定すると、\( x \in A - A_{\sigma} = A'_{\sigma} \) が存在することになります。 \( B_{\sigma} \cup (A'_{\sigma} - \{ x \}) \) の張る部分ベクトル空間を \( H \) とします。 \( B_{\sigma} \cup A'_{\sigma} \) は一次独立であるから、\( x \notin H \) です。一方で \( B \) は基底なので、\( x = a_1 x_1 + \cdots + a_n x_n, \ \ \ a_i \in k, \ x_i \in B \) と表せます。ここで \( x \notin H \) だから、 \( x_i \notin H \) となる \( x_i \) があるはずです。それを、\( y \) と置くことにしましょう。

このとき、\( \tau : B_{\sigma} \cup \{ y \} \to A \) を、 \( \tau|B_{\sigma} = \sigma, \ \ \tau(y) = x \) と定めると、 \( x \notin A_{\sigma} = \sigma(B_{\sigma}) \) より、これは単射。さらに、

\( B_{\tau} \cup A'_{\tau} = B \cup \{ y \} \cup (A'_{\sigma} - \{x\}) \) は一次独立です。なぜなら、 \( y \notin H \) だからです。

以上で、\( \tau \in \Phi, \ \ \sigma < \tau \) となる元が見つかり、極大性に矛盾します。以上のことから、 \( \sigma(B_{\sigma}) = A_{\sigma} = A \) で、すなわち、この写像は全単射であることがわかりました。 \( \Box \)